「建築士や設備設計の実務経験を活かして、国家公務員として社会インフラを支える仕事に就きたい」
――そんな思いを持つ建築・電気・機械系の技術者に、意外と知られていないキャリアの選択肢があります。
それが、最高裁判所「営繕技官」の経験者採用です。
営繕技官は、全国450あまりの裁判所施設の新築・改修設計や工事監理を担う技術系の特別職国家公務員です。
新卒だけでなく、民間企業や官公庁で建築・土木・電気・機械の実務経験を積んだ社会人も応募でき、選考は書類選考・レポート試験・面接(2回)が中心で、いわゆる公務員試験のような専門筆記試験はありません。

筆者自身、建築を学びハウスメーカーでの設計職を経て、現在は大手インフラ企業で発注者側の技術者として働くなかで、この最高裁判所営繕技官の内定を実際に獲得した経験があります(最終的には辞退しましたが)。
この記事では、営繕技官という仕事の全体像から、経験者採用の応募資格、選考フロー、そしてレポート試験・面接を突破するための戦略まで、公式情報と実体験をもとに詳しく解説します。
営繕技官とは|裁判所施設を支える技術系国家公務員

営繕技官は、最高裁判所事務総局経理局営繕課を中心に配置される、建築・電気設備・機械設備の専門職です。
裁判所施設の新築・改修における設計・積算、工事監理を主な業務としながら、予算要求や施設行政に関する企画立案、工事の検査など、業務範囲は多岐にわたります。
採用後は特別職の国家公務員として任用され、給与は職歴等により個別に決定されます。
年収イメージとしては、28歳・経験5年・係員級・大卒で年収470万円程度という例が公式に示されており、諸手当や賞与を含んだ額です。
勤務時間は1日7時間45分で、土日祝・年末年始が休みという、民間の設計・施工管理職と比べて働き方が安定している点も特徴です。
経験者採用の応募資格

営繕技官の応募資格は、実務経験と学歴のどちらか一方で満たせる設計になっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実務経験ルート | 民間企業・官公庁・国際機関等で正社員・正職員として建築、土木、電気、機械のいずれかに関する職務経験を有する者 |
| 学歴ルート | 高校・高専・短大・大学・大学院で建築、土木、電気、機械のいずれかの課程を修めて卒業・修了した者 |
| 国籍 | 日本国籍を有すること |
| 欠格事項 | 国家公務員法第38条の欠格条項に該当しないこと |
| 年齢 | 国家公務員法に規定する定年年齢を超えていないこと |
注目すべきは、実務経験ルートに年数の下限が明記されていない点です(勤務証明書等の提出は必要)。
つまり、建築・電気・機械いずれかの実務経験があれば、キャリアの長さにかかわらず門戸が開かれているということです。
さらに、庁舎や事務所の新築・改修の企画、設計・積算、工事監理に関わった経験、一級建築士・建築設備士などの資格は歓迎要件として明示されており、これらを持つ方は選考でより有利に働きます。
選考フロー|書類選考・レポート試験・面接2回

営繕技官の選考は、専門筆記試験がなく、書類選考・レポート試験・面接(2回)で構成されるのが最大の特徴です。
ここが、一般的な公務員試験の専門科目・教養科目とは大きく異なるポイントです。
| 選考段階 | 内容 |
|---|---|
| 第1次選考 | 書類選考(履歴書・職務経歴書)+レポート試験 |
| 第2次選考 | 1次面接試験(人物試験・Web面接) |
| 第3次選考 | 2次面接試験(人物試験) |
受付から最終合格発表まではおよそ3か月かかり、各選考段階で結果は応募者全員にメールで通知される運用です。
第2次選考はWeb面接で実施されるため、地方在住者でも受験しやすい設計になっています。
レポート試験で問われること
第1次選考のレポート試験では、「裁判所(営繕技官)を志望する理由及び裁判所施設に対するイメージ」「入所後に取り組みたい業務」の2点が課題として提示されます。
指定様式(A4用紙2枚程度)に記載する形式で、専門知識の正誤を問う試験ではありません。
ここで重要なのは、客観的な事実(いつ、どこで、何を、なぜ、どのようにして)に基づいて記述することが明確に求められている点です。
抽象的な志望動機ではなく、自分の実務経験の中の具体的なエピソードを、裁判所施設という文脈に接続して書く必要があります。
また、レポートに書いた内容は後の面接試験で深掘りされるため、事実と異なる内容を書くことはできません。
面接(2回)で見られていること
第2次選考の1次面接、第3次選考の2次面接と、合計2回の人物試験が行われます。
1次面接はWeb面接、2次面接は対面で実施される運用が一般的です。
ここで問われるのは、「なぜ民間企業ではなく裁判所なのか」という一貫した動機と、レポート試験に書いた内容の具体性・一貫性です。
営繕技官は「独立して書類作成関連業務、設計業者及び工事業者対応業務、所内調整などを行うことのできる能力」が求められる人材像として明示されています。
自分がこれまで担当してきた設計・積算・工事監理の経験を、この人材像にどう合致させて語れるかが、2回の面接を通じて一貫して評価されるポイントです。
一級建築士の資格取得を検討している方は、こちらも併せて確認してください。
営繕技官の経験者採用を突破する3つの戦略

専門筆記試験がない分、レポートと面接での言語化の質がそのまま合否を左右します。
戦略1|実務経験を「裁判所施設」というテーマに接続する
ハウスメーカーやゼネコン、設計事務所での実務経験を、そのまま経歴として語るだけでは評価されません。
庁舎や公共施設の新築・改修における設計・積算・工事監理の経験が、裁判所施設という公共インフラの整備にどう活きるかを、レポート・面接双方で一貫して語れるように整理しておく必要があります。
戦略2|レポート試験は「客観的事実」で構成する
レポート試験の注意事項には、客観的な事実に基づいて記載することが明記されています。
「頑張りました」「やりがいを感じました」といった抽象的な表現ではなく、いつ・どこで・何を・なぜ・どのように取り組んだかを具体的に書くことが、面接での深掘りにも耐えられる土台になります。
戦略3|歓迎要件の経験・資格を確実に棚卸しする
庁舎や事務所の新築・改修の企画、設計・積算、工事監理の経験、一級建築士・建築設備士等の資格は歓迎要件として明示されています。
自分のこれまでのキャリアの中から、これらの歓迎要件に該当する経験・資格を漏れなく棚卸しし、職務経歴書とレポートの両方に反映させることが、選考通過の確度を上げます。
【実体験】筆者は最高裁判所営繕技官の内定を獲得

ここからは、少し私自身の話をさせてください。
私は建築を学び、ハウスメーカーでの設計職を経て、現在は大手インフラ企業で発注者側の技術者として働いています(一級建築士・1級建築施工管理技士・宅建士を保有)。
そのキャリアの途上で、最高裁判所営繕技官の内定を実際に獲得しました。
最終的に私は別の道を選び、この内定は辞退しましたが、この選考を実際に通過した経験から言えることがいくつもあります。
レポート試験でどのエピソードを選び、どう構成したか。1次面接(Web)と2次面接でそれぞれ何が問われ、どう深掘りされたか。
そして技術者としてのキャリアの中で公務員転職が本当に正解なのかをどう判断すべきか。
これらは、公式サイトの受験案内を読んだだけでは書かれていない、実際に受けて、通った人間にしか語れない一次情報です。
詳しい体験談・対策はnoteで公開しています
この最高裁判所営繕技官の選考を実際に突破した経験、そして同時期に受けた東京消防庁(技術系)の選考体験(こちらも内定を獲得し、辞退しました)を含めた具体的な対策と本音は、note記事にまとめて公開しています。
建築・技術のバックグラウンドを持ちながら技術系公務員という選択肢を検討している方に向けて、
選考の実態、対策の勘所、そして「内定を得たうえで、なぜ私は辞退したのか」という判断の裏側まで、包み隠さず書いています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 営繕技官は建築の仕事だけをするのですか?
A. 主業務は設計・積算・工事監理ですが、それ以外にも予算要求や施設行政の企画立案、工事の検査など幅広い業務を担当します。
建築区分だけでなく電気設備・機械設備の区分もあります。
Q2. 実務経験は何年あれば応募できますか?
A. 応募資格には経験年数の下限が明記されておらず、正社員・正職員として建築・土木・電気・機械のいずれかの職務経験があれば応募可能です。
ただし最終合格後は勤務証明書等の提出が必要です。
Q3. 一級建築士がないと応募できませんか?
A. 資格がなくても応募は可能です。
ただし一級建築士や建築設備士、構造設計・設備設計一級建築士は歓迎要件として明示されており、保有していれば選考で有利に働きます。
Q4. 面接は何回ありますか?
A. 第2次選考で1次面接(Web面接)、第3次選考で2次面接の合計2回です。
レポート試験に書いた内容が、面接で深掘りされる前提で臨む必要があります。
Q5. 地方在住でも受験できますか?
A. 応募自体は全国から可能で、第2次選考の1次面接はWeb面接で実施されます。最終的な採用予定地は最高裁判所(東京)です。
まとめ|建築の実務経験を、司法インフラの現場で活かす道
最高裁判所「営繕技官」の経験者採用は、建築・電気・機械の実務経験を、裁判所施設という公共インフラの整備に直結させられる、あまり知られていないながらも価値のあるキャリアの選択肢です。
改めて要点を整理します。
選考は書類選考・レポート試験・面接2回で構成され、専門筆記試験はありません。
実務経験の年数下限も明記されておらず、一級建築士や建築設備士などの資格は歓迎要件として選考を有利に進める材料になります。

筆者が実際に最高裁判所営繕技官の内定を獲得した経験と、そこから得た具体的な対策、そして「なぜ辞退したのか」という判断の裏側は、note記事で詳しくお伝えしています。
技術系公務員への転職を本気で考えている方は、ぜひご覧ください。
あなたのキャリア選択が、納得のいくものになることを心から願っています。